塩田に近づくと、雨の音がします。梅雨時を想わせる、とぎれることのない長雨の音です。この雨音が「流下式塩田」の仕掛けの要とも言えるものです。
塩はきれいな海水から作ります。海水に含まれる塩分濃度は約3%程度。これをだんだんと濃い海水にしていく働きをするのが、この流下式塩田です。
昭和40年代までは四国の瀬戸内海側などで大がかりな流下式塩田が建ち並んでいる様子を目にすることができました。それらがすべて姿を消し、塩づくりはイオン交換式製法に取って代わりましたが、塩の自由化により、こうして昔ながらの製法を復活させることができました。昔は竹や笹を利用していたものを、ここでは黒いネットで代用。製法で変わった点と言えばそれくらいでしょうか。下に落ちてきた少し濃くなった海水を集め、再びポンプで汲み上げて上から少しずつ流す。この繰り返し。流下式塩田は、終日、雨の音しきり、です。