

海の満潮・干潮は月がもたらし、月の周期、位置によって海の様子は変わります。月の動きに基づいた暦が太陽太陰暦で、この、月のカレンダーとも言える旧暦は、古くから農業や漁業を営む上での羅針盤として活用されてきました。 いつ、塩田用の海水を汲み上げるか、どの位の目安でかん水を作るか、いつを潮時に、塩づくりを締めくくるか・・・。夜な夜な月を伺いつつ、自然界の周期と、長い暮らしのなかで生まれた人間の智恵を塩づくりに生かしています。

私たちの塩づくりには、休業期間があります。それは、冬季。天日で乾燥して塩を作りますので、日中の気温が上がらない冬季はどうしても効率が悪く、断念せざるを得ません。その間は、塩田を修理したり、改良したり、冬に向けて補強したり、調べものをしたりして過ごします。なにしろ、塩づくりのシーズン中は、雨降りの日といえども、のんびりと休むわけにはいきませんから。 再び塩づくりが始まるのは、3月初旬くらいから。二十四節気の「啓蟄」。冬眠していた虫たちが動き出すという頃まで、じっと時が来るのを待つしかありません。まさに、潮時(しおどき)を待ちわびます。